STARTING OVER

小学生の頃、永井豪みたいな漫画家になりたいと思った。
xxxになりたい、なんて思う時は、たいがいその道の誰かの影響を受けた時だ。
私の場合、最初に憧れた職業が漫画家であり、漫画家として最初に意識したクリエイターが永井豪だったわけだ。
その後、今までに色々な職業を夢見て、その道のクリエイターに憧れを抱いてきた。
もうずいぶんと昔のことだ。
いま、そんな私の優先順位一番は、小説を書くことである。
しかし、それに関しては、誰かに憧れて始めたわけではない。
漫画を描くには時間がかかりすぎる、少しでも早く作品を完成させ、より多くの作品を世に発表したい。
そんな思いから、自分の創った物語を漫画で表現するのをやめ、小説にシフトしたのだ。
あくまで、小説表現は代替的なものであり、妥協であった。
しかし、ここのところの数日間。
秋山瑞人の『イリヤの空 UFOの夏』を夢中になって読んだ私は、はじめて。
こういう話を書いてみたい、こんな作家になりたい――と思ったのだ。
せつなく、悲しく、残酷で、だけれどこんなにやさしい物語を、あふれんばかりの瑞々しい文章で綴る。
読了したのは朝の都営新宿線の中だったが、私はたしかに夏の風が通りすぎていく園原の街に立っていた。
目標が出来た。
この作品は、すでに7年も前に世に送り出されたものだったが、今こうして私は読む機会を得ることが出来た。
そこに運命的な何かがあった、などとは言わない。
私は徹底したリアリストであり、故に妥協を許さない、安易に超常現象に逃げないSFをこよなく愛しているのだ。
SFを追いかけていれば、必ずいつか出会ったのだ。故にこの出会いは必然であったのだろう。
私はSFファンだが、だからといって正直完璧なSFを書けるとは思っていない。
しかし、いつか、この作品のようなSFを書いてみたいと。
思いをはせる。まだまだ――人生、これからだぜ。